コンプライアンス研修 (4) 社内規定

社内規定や就業規則とは?

労働者が安心して働ける明るい職場環境を作ることは、事業規模や業種を問わず、すべての事業場にとって重要なこと。

そのためには、あらかじめ就業規則で労働時間や賃金をはじめ、人事・服務規律など、労働者の労働条件や待遇の基準をはっきりと定め、労使間でトラブルが生じないようにしておくことが大切である。そうした目的に沿って作られたルールが社内規定
コンプライアンス意識向上にもつながる

就業規則作成の義務はあるのか?

常時10人以上の労働者を雇用する使用者は、就業規則を作成する義務を負う。所轄労働基準監督署長に届出必要。(労基法第89条)

日常的に雇用する労働者が10人未満の事業場は、就業規則の作成・届出義務なし。

しかし、就業規則を作成する事で、基本的な労働条件や服務規定、経営方針等が明確にできる。トラブル防止や労働者が安心して働ける環境の整備につながる。
作成義務がなくとも、就業規則を明示する事はおすすめ。

就業規則の対象者は?

すべての労働者が対象。しかし、就業規則は全労働者が同一でなくともよい。同一の事業場であっても、勤務形態の異なるパートタイム労働者等については、一定の事項について別の就業規則を定めることができる。

作成した就業規則は、労働者各人への配付、いつでも見られるよう掲示、備付け、あるいは電子媒体に記録確認できるようにする方法で周知せねばならない
(労基法第106条第1項)。

就業規則は、作成しただけ、労働者の代表者から意見を聴取しただけ等では効力は発生しないと解されている。

就業規則の効力?

就業規則は、法令や労働協約に反してはならない(労働基準法92条)。
→労働基準法で定められた基準を下回った場合、その部分は無効。

就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効となる(労働基準法93条、労働契約法12条)。

就業規則に何を記載するのか?

絶対的必要記載事項
労働基準法では就業規則に必ず記載しなければならない項目を定めており、これを「絶対的必要記載事項」という。
→記載がない場合、30万円以下の罰金。

相対的必要記載事項
会社として制度を設ける場合には、必ず記載しなければならない項目

任意的記載事項
就業規則記載するかどうかは自由である項目

就業規則に記載する項目(1)絶対的必要記載事項

絶対的必要記載事項
(1)労働時間や休暇について
①始業時刻、②終業時刻、③休憩時間、④休日、⑤休暇、
⑥労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては
就業時転換に関する事項

(2) 賃金について
⑦賃金の決定、計算の方法、⑧賃金の支払の方法、⑨賃金の締切り及び支払の時期、⑩昇給に関する事項

(3) 退職・解雇について
⑪退職関係 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

就業規則に記載されている項目(2)相対的必要記載事項

相対的必要記載事項
制度を設ける場合には必ず就業規則に記載をしなければならないものとして、法律で以下のとおり決められている。

【記載例】
① 退職手当に関する事項
② 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
③ 食費、作業用品などの負担に関する事項
④ 安全衛生に関する事項
⑤ 職業訓練に関する事項
⑥ 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
⑦ 表彰、制裁に関する事項
⑧ その他全労働者に適用される事項

就業規則に記載されている項目(3)任意的記載事項

任意的記載事項
法的な規制がないため、社会通念や公序良俗などを踏まえて会社が独自に定める事項

【具体例】
① 企業理念
② 応募や採用に関する内容
③ 副業の取り扱い
etc

社内規定や就業規則違反の対処について

顧客情報の私的利用やハラスメント行為など就業規則違反や欠勤・遅刻を頻繁にしている問題行動が見られたとしても、即座にペナルティを課すべきではない。

違反しているかどうか判断するには、信頼のおける人物や複数人からの証言であっても、十分な事実確認が必要。証拠も重要である。

事実誤認のもと処分等が行われたとなれば、会社側がコンプライアンス違反を問われる事態となる。

事例①

質問

社員Aは、上司の了承を得ず、繁忙期でたまっていた仕事を片付けるべく自主的に無断で残業をした
無断で休日出勤も行ったが、会社に残業代等の申請はしていない。会社には損失は与えておらず、業務に貢献したと考えている。

しかし、サービス残業等の事実を知った上司からこれらの行為に対し注意を受けた。残業しないと仕事が回らなかったのは事実だ。それを注意するとは、
これは上司からのパワハラではないのか?

回答

■了承を得ていない残業の多くは就業規則違反である。

■サービス残業を黙認した場合、上司も規則違反の可能性あり。

結論、上司が社員Aを注意した行為はパワハラとは言えない。
今回の事例は、残業代の発生有無が問題ではない。勝手に残業をしたという事実が問題となり、社員Aが規則違反を問われる側にある。

会社のためを思った行為がコンプライアンス違反に該当することもあるのでご注意を。

事例②

質問

メルカリで着なくなった服や本等を出品してお小遣い稼ぎをしている。

1ヶ月に1回ほど出品し、1回で2万円ほどのお小遣いを得ることもある。勤務先では副業は禁止されているのだが、これは副業にあたるか?

回答

■不要品を売った単発的な行為であり業務とはいえない。
■仕入れ販売を継続的に行っている場合は副業の可能性あり。
■基本的に就業時間外における行動は労働者の自由。

今回の事例では、副業にはあたらない。

【副業が許されている場合】

①副業が本業に支障をきたすか。(労働時間数、労働の時間帯など)
②副業の内容が企業秩序を害するものか。
③副業先と本業が競業関係にあるか。

 

コンプライアンス研修 (1) 総論

コンプライアンス研修 (2) 個人情報と情報漏えい

コンプライアンス研修 (3) ハラスメント