コンプライアンス研修(7)~労働時間と残業代【2】

労働時間

労働時間とは???
ex、就労の準備(制服への着替え)は?
朝の掃除?
昼休憩で電話番を兼ねている場合は?

法律に明確な定義はないが…

判例…労働時間=労働者が使用者の指揮命令下にある時間
(三菱重工長崎造船所事件最高裁判決)

労働契約や就業規則などの定めによって決 められるものではなく、客観的に見て、労働者の行為が使用者から義務づけ られたものといえるか否か等によって判断!

「労働時間」にあたるかの判断基準

明示の指示・命令があるかどうか 例)就業規則
黙示の指示・命令があるかどうか 例)常態化した残業黙認
時間的拘束・場所的拘束  例)業務のための自宅待機
業務性があるかどうか 例)終業後の掃除、参加強制の飲み会
対応が頻繁に必要かどうか 例)昼休みに頻繁に電話対応

ケース別 判断のポイント~

持ち帰り残業

会社業務をオフィス内ではなく、自宅等に持ち帰って行う残業のこと。場所的な拘束は受けずとも、以下は残業の可能性大。

➀持ち帰り残業を、会社が認識しながら黙認していた
②持ち帰り残業をせざるを得ない多大な業務量があった
③持ち帰り残業を行わず期限を過ぎる場合、労働者側が不利益を受けるおそれあり

リモートワークも同様に考えられる。

手待ち時間

手待ち時間は、作業の合間で待機している時間。

例)運送業の労働者が、荷受け時間、荷降ろし時間等の合間で待ち時間が生じたとき等。待機とみなすかが裁判で争点になりやすい。

仮眠時間

業務の合間に仮眠をしている時間。24時間勤務や深夜労働、交代制勤務の労働者が残業代請求するケース多い。
例)ホテルスタッフ。看護師。

出張先への移動時間

労働時間にはあたらない。

出張の移動時間は、通勤時間と同様、就労場所まで労務提供の前提とされる行為のため。

出張の移動時間中に一定の作業を行っておくよう指示されるような場合は労働時間にあたる可能性大。

移動時間中も使用者の指揮命令下に置かれていると評価できる時は、労働時間と判断される可能性がある

業務時間中の移動時間

外回り営業であれば、業務時間中にも移動時間が発生。
移動車内でひと休みしても、営業先から営業先へ移動するなど、業務を遂行するにあたって当然必要となる時間とみなす。
労働基準法の「労働時間」にあたる。例)外回り営業

これに対して、業務開始前や業務終了後に自宅へ移動するなど「直行直帰」が許可されている場合は、営業先と自宅の間は通勤時間と考える。「労働時間」にはあたらない。
例)営業開始前後の直行直帰

教育研修

教育研修の時間は、実作業に従事しているわけではない。
判断のポイントは、研修参加への拘束力の強さ。
➀参加が強制であるか
②費用が会社負担であるか
③研修が業務時間内に実施されたか
④業務との関連性が強いか
⑤報告・課題があるか
⑥法令で義務付けられているか

【時事ニュース】 勤務時間は何分単位で計算?大手ファミレス1分単位に 16億円余支払いへ

ファミリーレストラン最大手の「すかいらーくホールディングス」は、パート等への賃金支払いについて、労働組合との交渉。5分単位から1分単位に変更し、過去2年分をさかのぼり未払い金16億円余りを従業員に支払う。

約9万人の従業員が対象となり、支払額は16億円余りに上る。同社は、これまでの勤務管理は法律に違反していないとの認識を示した上で、従業員との信頼関係を維持し、より働きやすい環境づくりに努めていきたいとコメント。

松野官房長官は、記者会見で「実際に労働した時間に対する賃金は、労働基準法により全額を支払わなければならず、労働時間の切り捨ては認められない。各企業においては、適切な労働時間の管理に基づく賃金の支払いを行っていただきたい」と述べた。
2022年6月9日NHKニュース

端数処理

(1)割増賃金の計算

A.1時間あたりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上1円未満の端数を1円に切り上げる。

B.1か月間における割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、Aと同様に処理する。

(2)平均賃金の計算

C.賃金の総額を総暦日数で除した金額の銭未満の端数を切り捨てる。なお、平均賃金を基にして休業手当等を計算する場合は、特約がなければ円未満の端数処理はAと同じ。

(3)1か月の賃金計算

D.1か月の賃金額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した残額)に100円未満の端数が生じた場合は50円未満の端数を切り捨て、50円以上の端数を100円に切り上げて支払うことが出来る。

E.1か月の賃金額に1,000円未満の端数がある場合は、その端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うことが出来る。 なお、E・Dの取り扱いをする場合は、その旨就業規則に定めることが必要です。